| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-R-468  (Poster presentation)

過重力下におけるコケ植物の形態変化

*亀石隆司(京都工芸繊維大学), 阪口直哉(京都工芸繊維大学), 蒲池浩之(富山大学), 唐原一郎(富山大学), 久米篤(九州大学), 藤田知道(北海道大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学)

人類が宇宙ステーションなどの環境で長期滞在するには、閉鎖生態系生命維持システムが必要になる。植物は光合成により二酸化炭素を消費し酸素を供給する。したがって、宇宙に長期滞在する環境において植物栽培システムは必要である。コケ植物は小型であり、省スペースかつ大量栽培が容易なので、宇宙ステーション内での栽培に有利である。また、コケ植物は高いストレス耐性と再生能力を持ち、宇宙環境でも生育可能と考えられる。しかし、地上と異なる重力環境下でのコケ植物の応答については明らかにされていない。そこで、本研究では、単純な体制を持ちストレスに対する成長応答が極めて明快であるヒメツリガネゴケを用いて過重力条件での形態変化を調べた。
 過重力条件を作り出すために、富山大学に設置されている過重力栽培実験装置(MK-3、松倉)を用いた。ヒメツリガネンゴケを地球上と同じ重力条件1×gおよび過重力条件6×g、10×gで直径7.5cmのプラントボックス内に4週間と8週間で栽培した。ヒメツリガネゴケを樹脂(Spurr resin kit)に固定包埋し、ミクロトーム(Leica EM UC6)で1000nmの切片を作成し、光学顕微鏡(BX51OLYMPUS、日本)観察しImageJで画像解析した。またミクロトームで60nmの切片を作成し、透過型電子顕微鏡JEM-1220 (日本電子データム株式会社)を用いて観察しImageJで画像解析した。
6×g 、10×g条件下で葉の葉緑体が肥大化し、重力に依存して増加率が上昇した。10×g条件下で生の茎の太さが増加した。6×g 、10×g条件下で葉の細胞壁の厚さ、中肋から先端までの長さおよび、茎の葉緑体の大きさ、細胞壁の厚さ、直径、細胞密度は変化しなかった。以上の結果から、過重力条件でヒメツリガネゴケを栽培すると葉緑体が肥大化し、大気から二酸化炭素の取り込みが促進されると考えられる。


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