| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-049  (Poster presentation)

デジタルカメラの RGB データを用いた南極陸上生態系の植生調査法の開発

*水野晃子(名古屋大学宇宙地球環境研究所), 田邊優貴子(国立極地研究所)

南極や北極・高山帯などでは、蘇類・シアノバクテリア及び地衣類の群集は温度環境や栄養環境が極めて厳しい極域における一次生産者の主要な構成要素であり、極域の陸上生態系を理解する上でも、気候変動への生物応答を知る上でも重要である。しかし、これらをモニタリングするために、森林や海洋の一次生産者の衛星写真や航空写真を使ったリモートセンシング技術をそのまま応用することは難しい。なぜなら、これらの技術は最小でも数メートルの空間スケールで、1センチメートル以下のスケールで局所的に変化する極域陸上植生の変化を捉えるためには十分ではないからである。そこで本研究では、このような局所的に分布する植生に特化した写真データ解析によるリモートセンシング技術を開発し、現在国立極地研究所(極地研)で保有されている写真データを解析することを目的とした。
シアノバクテリア領域2種・地衣類領域・植物以外の領域の合計4種類のRGBデータをピクセル単位で抽出し、それらのRGBデータを用いて正準判別分析およびナイーブベイズ法による判別を行った。正準判別分析の結果によると教師データの判別による精度は80%程度と比較的高かったが、地衣類を岩と判別してしまうなどの誤判別が見られた。一方、ナイーブベイズ法による判別の精度は判別対象によってばらつきがみられたが、被度を過剰に推定することはなかった。どちらの方法でも岩と地衣類の判別が難しかったが、これは岩と地衣類の輝度および色合いがかなり似通っているためであると考えられる。また、対象ピクセルと同時に周辺のピクセルも加えて判別する解析も行った。今後は、ピクセル単位だけでなく、輪郭を抽出してオブジェクト毎の解析を行っていく。この解析方法が確立されコドラート写真の自動解析が可能になれば、極地のような野外調査の機会が限られる地域での陸上植物群衆の情報獲得に大きく貢献すると期待できる。


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