| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-073  (Poster presentation)

植物との触れ合いは健康を促進する:メタ解析による検証

*曽我昌史(東京大学農学部), Gaston, Kevin(エクセター大学), 山浦悠一(森林総合研究所)

現代の「都市化社会」において、都市住民の健康を促進させることは極めて重要な課題である。実際に、高血圧や糖尿病等の生活習慣病や、鬱病や不安症等のメンタルヘルス疾患の発症に都市環境が関わっていることは広く知られている。これまで、ガーデニング(草花の手入れや趣味の野菜作り)を通した植物との触れ合いは人々の健康や生活の質の向上に貢献することが指摘されてきたが、どれほどその効果に一貫性があるのかは分かっていない。

本発表では、メタ解析を用いて、ガーデニングと健康促進の関係にどれほど一貫性があるのかを検証することを目的とする。演者らは、2016年1月に系統的・網羅的な文献検索を行い、ガーデニング(農園療法、家庭菜園や市民農園における野菜作り・草花栽培等)と健康の関係を調べた文献を収集した(ここでの「健康」とは、単に病気でない状態だけではなく、生活の質や生きがい等を含めた広い意味での健康を指す)。そして、各研究で行われた試験ごとに、ガーデニングに参加することがどれほど健康促進と関連しているのかを定量化(効果量を計測)した。最終的には、文献収集で得られた76の試験全てで効果量を計測し、メタ解析に用いた。

メタ解析の結果、ガーデニングへ参加することは、人々の健康促進と有意に関連することが明らかとなった。具体的には、ガーデニングへの参加が、欝・不安症状・ストレスレベルの低下、人生満足度や生活の質・自尊心・地域社会に対する結びつきの向上、肥満の防止など、心身の健康に関わる多様な健康尺度の向上と関連することが分かった。また、身体的健康と精神的健康を比較した結果、精神的健康尺度の方がよりガーデニングとの関連性が強いことが明らかとなった。これらの解析結果は、出版バイアスや偽反復の影響を考慮しても変わらなかった。以上の結果は、ガーデニングを通した植物との触れ合いが人々の健康に資することを示唆している。


日本生態学会