| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-138  (Poster presentation)

兵庫県におけるツキノワグマの増加傾向および個体数推定モデルの再検討

*高木俊, 横山真弓(兵庫県立大学)

兵庫県には、近畿北部地域個体群、東中国地域個体群の2つのツキノワグマの地域個体群が、それぞれ近隣府県をまたがる形で分布している。両地域個体群はかつての人間活動の影響から分布が縮小しており、絶滅の危険性が高かったことから、兵庫県では平成8年にツキノワグマ保護管理計画を策定し、絶滅リスクの低減を目指した保護管理を行ってきた。現在では、個体数の増加と分布拡大に伴う絶滅リスクの低減と、人身事故発生といった被害リスクの上昇から、集落周辺での管理を強化するゾーニング管理の適用など、新たな管理計画が検討されている。
適切な管理手法を選択する基準として、県内に生息するクマの推定個体数を毎年算出し、この値に基づく順応的管理を行っている。昨年度までの推定は、毎年の目撃件数、捕獲個体の標識放獣による標識再捕獲、有害捕獲による捕殺数などのモニタリングデータを用いて、Harvest-based法とLincoln-Peterson法の考え方を基にした、状態空間モデル(階層ベイズ法)によって行っていた。しかしながら、地域個体群毎のデータをプールしている、個体群間移動が明示されていないなど、近年の分布拡大状況にモデルが対応しきれない状況になりつつある。一方で、捕獲や出没の位置、個体ごとの捕獲履歴、捕獲個体の年齢など、モデル上十分に考慮されていないデータも存在している。
そこで、今後検討されている府県間での連携管理に向けて、個体情報(位置つき捕獲履歴・一部個体については年齢)を含めた、地域別の個体数推定モデルの開発を行った。地域別の推定結果から、兵庫県内の両地域個体群の個体数は上昇傾向にあること、地域により年ごとの増減傾向は異なり、特に京都府側において府県間の移出入が動態に影響している可能性が示唆された。


日本生態学会