| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-E-161  (Poster presentation)

北海道から中国を経由して東南アジアへ渡るノビタキの追跡

*山浦悠一(森林総合研究所, 北海道大学), Heiko Schmaljohann(ヘルゴランド鳥類研究所), Simeon Lisovski(カリフォルニア大学デービス校), 先崎理之(北海道大学), 河村和洋(北海道大学), 藤巻裕蔵(山階鳥類研究所), 中村太士(北海道大学)

 北アジアからオーストラリアにかけての区域は「東アジア―オーストラリア・フライウェイ」と呼ばれ、世界で最も多くの鳥類が毎年南北に長距離の渡りを行なっている。しかし、本フライウェイにおいて小型鳥類の渡りルートは明らかになっていない。そこで本研究では、北海道で繁殖する草地性鳥類ノビタキ Saxicola stejnegeri に定期的に照度を計測するジオロケーターを装着し、渡りルートを推定した。北海道の石狩平野で個体を捕獲してジオロケーターを装着し、翌年帰還個体を再捕獲してデータを回収し、解析を行なった。

 その結果、繁殖を終えたすべての個体は北海道からロシア・沿海地方南部もしくは中国・黒竜江省東部に移動したと推定された。その後中国の中継地を経て南下し、中国南部もしくはインドシナ半島で越冬していた。

 越冬地と中継地では、本種の生存に関するいくつかの脅威が挙げられる。中継地の中国では、小鳥の大規模な違法捕獲が現在行なわれている。越冬地のインドシナ半島では、焼き畑などにより維持されてきた草地がゴム農園に転換されており、粗放的な農地は世界的な食料需要を賄うために集約化が最も期待されている。

 国内で減少している草地性生物を保全するために、林業の再生や野焼きの再開などが近年議論されている。しかし草地性の渡り鳥の場合、渡り中継地や越冬地での保全への配慮も大事な役割を担っていると考えられる。


日本生態学会