| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-212  (Poster presentation)

農作物貿易を介した送粉サービスの海外への依存度評価

*橋本弾(横浜国立大学), 西嶋翔太(中央水産研究所), 滝久智(森林総合研究所), 古川拓哉(森林総合研究所), Thomas Kastner(BiK-F), 松田裕之(横浜国立大学)

生態系サービスのひとつである送粉サービスは、訪花昆虫などの花粉媒介生物が農作物等の植物の受粉を担うことで人間に恩恵をもたらす。特に農作物の送粉サービスは、野生の花粉媒介者の減少や飼育した媒介者の導入など、農作物生産を大きく左右する可能性がある。将来的な人口増加とそれに伴う食糧需要の増加が予想されるため、早急な評価が求められている。送粉サービスの劣化とその管理に対して関心が高まり、世界中の地域で送粉サービス評価の調査が進められている。また他方で国際貿易も近年拡大し、輸出国と輸入国の間で様々な影響が転移している。しかし、農作物貿易に伴う海外の送粉サービスの依存度を評価した研究はない。そこで、農作物の送粉サービス依存度のデータと農作物貿易のデータを用いて、全82品目の農作物・196の国または地域を対象とした送粉サービス依存度評価を行った。
送粉由来農作物の需要は世界的に高まっており、サブサハラアフリカやラテンアメリカがEUや北アメリカに対して送粉サービス依存度の高い農作物の輸出に強く貢献していた。また、サブサハラアフリカや中部アメリカは送粉サービス依存度の低い農作物に対して輸入国となっていた。このことから、これら開発途上の地域において、送粉サービス依存度の高い農作物は重要な貿易資源であると考えられ、先進国がそれらの資源を消費しているといえる。
送粉サービスの劣化が指摘されているが、これら開発途上地域の送粉サービスについての調査は先進国と比較して、進んでいない。これら地域の送粉サービスについて調査することは農作物貿易経済においても重要である。


日本生態学会