| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-264  (Poster presentation)

綾ユネスコエコパークにおける住民の認知度と意識の変化

*外崎杏由子(筑波大院・人総), 朱宮丈晴(日本自然保護協会), 吉田正人(筑波大院・人総)

 ユネスコエコパークは人と自然の関わりを持続可能に保ちながら、生態系の保全を目指す制度である。宮崎県綾町は1970年代から照葉樹林を守り自然と共生するまちづくりを推進し、2005年からは照葉樹林の保護と復元を柱とする綾の照葉樹林プロジェクトを進めてきたことなどが高く評価を受け、2012年に綾ユネスコエコパークとして登録された。本論はユネスコエコパークの目指す持続可能性と生態系保全の両立と基礎資料の蓄積のため、綾ユネスコエコパークにおいて住民の綾ユネスコエコパークと照葉樹林に対する認知と意識について明らかにした。
 方法は2016年3月から4月にかけて綾町民に対しアンケート調査を行った。300枚を配布したうち176の有効回答を得、回収率は59%であった。
 結果は、綾ユネスコエコパークの認知度が77%、綾の照葉樹林プロジェクトの認知度は63%であった。綾ユネスコエコパークに関連する取り組みの認知度はユネスコ・スクールが28%、綾町生物多様性地域戦略が18%であった。その印象について聞いたところ、綾ユネスコエコパークに好印象を持っている人が69%、綾の照葉樹林プロジェクトに好印象を持っている人が71%であった。綾の照葉樹林プロジェクトの印象については、発足当初の55%と比べると16ポイント上昇している。さらに綾の照葉樹林について77%が親しみを感じると回答、照葉樹林を誇りに思うが79%であった。誇りに思う理由ではその大きさや他にないものだという意見が多く寄せられた。また貴重で、豊かな恵み、きれい、空気がいいなどが照葉樹林のイメージとして挙げられた。以上の結果から住民が綾ユネスコエコパークの登録を好意的に捉えていることが明らかとなった。一方で綾ユネスコエコパークの核となる活動と考えられる綾の照葉樹林プロジェクトが今後自然との関わりやふれあいを作り出す仕組みとして機能する必要がある。


日本生態学会