| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-I-278  (Poster presentation)

ヒサカキの花の匂いと訪花者

*辻かおる, 小澤理香(京大・生態研センター)

花の匂いは送粉者の誘引に役立つと考えられており、雌雄異株植物では、花の匂いが雌雄で異なる場合があることが知られている。ヒサカキは、雌雄異株植物で、早春に咲く花からはヒサカキ特有の匂いが感じられる。そこで、ヒサカキの匂いの分析を行い、雌雄の花で匂いが異なるのか、また、その匂いは送粉者の数と相関しているのかを調べた。最も多く見られた送粉者は、ハエ目の昆虫であった。また、花の匂い成分として、ジメチルジスルフィドなど、硫黄成分を含む、15の成分が検出された。この硫黄成分を含む臭い匂いは、ハエを送粉者とする植物や腐ったものからよく検出される匂いである。また、主要成分に有意な雌雄差は見られなかったが、比較的微量成分であるδ-テルピネンは雄花から多く検出されていた。また、主成分分析を行い、匂いと送粉者の関係を調べたところ、カ亜目(ハエ目)の個体数は花の匂いのブレンドと相関がみられた。これらの結果は、ヒサカキの花の匂いがハエ目の昆虫の誘引に寄与していること、ハエ目の昆虫がヒサカキの主な送粉者であることを示唆している。


日本生態学会