| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-307  (Poster presentation)

里山から市街地に点在するため池のユスリカ多様性をDNAバーコードにもとづき類型化する

*高村健二(国立環境研), 上野隆平(国立環境研), 今藤夏子(国立環境研), 大林夏湖(東大・総合文化)

 ユスリカ科昆虫は種多様性に富み、湖沼・河川で優占するため、淡水域の生物多様性と生態系機能を評価する上で注目されるが、出現期間が長く定量採集の容易な幼虫は種特異的な形態分化が乏しいため多様性調査が困難であった。この困難を解消するためにDNAバーコーディングを適用し、兵庫県南西部のため池においてユスリカ多様性とため池内外の環境条件との関係を解析している。
 幼虫標本のミトコンドリアCO1領域DNA配列を決定し、ハプロタイプ配列から系統樹を作成した。系統樹上の種間分枝と種内分枝を統計的に区別する進化的種区分法を適用してOTUを区分し、国立環境研ユスリカ標本DNAデータベース(http://www.nies.go.jp/yusurika/index.html)等所載のDNAバーコードに基づいて種名を確定した。系統樹作成にはMr. Bayes、BEAST、OTU区分にはGMYCとPTPを用いた。ユスリカ多様性と環境条件との関係解析にはNMDSを用いた。
 初夏および初秋の20面のため池から1,060個体のユスリカ幼虫が採集され、全体で72種、1面当り0〜21種(底質0〜15種、水草3〜16種)のユスリカが区分された。多様性解析を行なった初夏の底質からは50種(0〜11種/池)が区分された。
 採集標本1個体だけの池を除いた18面の池の底質群集組成はNMDS二次元空間上で4群に類型化された。水質・底質・植生・周辺土地利用等の環境条件をこの空間上に投影したところ、次元1はヒシ被度、次元2は全リン濃度および透明度との関連が認められた。各類型について Propsilocerus akamusi(アカムシユスリカ)、Benthalia sp.等の指標種が認められた。


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