| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-316  (Poster presentation)

魚類絶対寄生性のウオノエ科等脚類の系統進化:寄生様式の多様化と淡水域への侵出

*畑啓生(愛媛大学), 曽我部篤(弘前大学), 川西亮太(北海道大学)

 寄生者-宿主の共進化において、寄生者の新規生息場所への侵出や、新規形質の獲得はブレークスルーをもたらし、寄生者の多様化に繋がる。等脚目ウオノエ科は全種が魚類への絶対寄生性で、宿主魚の体表や口腔、鰓蓋腔、あるいは腹腔を生息場所とし、宿主魚の血液や体液を餌とする。本研究では、新規寄生部位の獲得や、淡水域への侵出がウオノエ科の多様化にどのような影響を与えたのかを明らかにするため、63種の宿主魚から得られた28種のウオノエについて、ミトコンドリアDNAの16S rRNA遺伝子とCOI遺伝子領域の配列を得、データベースに登録されている24種を加えて系統解析した。その結果、ウオノエ科のなかで、深海のホラアナゴ類の鰓蓋腔に寄生するホラアナゴノエが初期に分岐しており、鰓蓋腔への寄生型が最も祖先的な形質で、そこから口腔への寄生型が生じ、さらに体表への寄生型が派生したことが推察された。南米の淡水域に生息するオトシンクルス類の腹腔へ寄生するウオノエは、ホラアナゴノエに次いで初期に分岐しており、腹腔型は祖先的な鰓蓋腔への寄生型から生じたことが推察された。タンガニイカ湖のシクリッドの口腔に寄生するウオノエはサヨリの鰓蓋腔に寄生するサヨリヤドリムシを含むエラヌシ属と単系統となり、ウオノエの淡水への侵出は、南米とアフリカタンガニイカ湖で独立に少なくとも二度生じたことが明らかになった。


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