| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-377  (Poster presentation)

ヒノキ林の下層植生タイプ分類と,それが表土流亡の抑止に及ぼす影響

*渡邉仁志(岐阜県森林研究所), 井川原弘一(岐阜県森林研究所, 現所属:岐阜県立森林文化アカデミー), 横井秀一(岐阜県森林研究所, 現所属:岐阜県立森林文化アカデミー)

ヒノキ一斉人工林の表土流亡は,地表面の被覆物(下層植生,堆積リター)によって抑制できることが知られているが,その効果は下層植生のタイプ(質や量)によって異なる。したがって,下層植生タイプから表土流亡の程度を予測したり,表土流亡の危険性が低い植生タイプを人工林の管理目標のとすることが可能であると考えられる。本研究では,岐阜県南部の5~11齢級のヒノキ人工林54ヶ所で行った林分調査,植生調査,地表面調査をもとに,表土流亡の抑止効果の観点から下層植生タイプを分類し,下層植生タイプが表土流亡の抑止に及ぼす影響を検討した。
調査地にはさまざまなタイプの下層植生がみられた。ヒノキの密度指標(立木密度),総量(胸高断面積合計)と下層植生の植被率との間には負の,密度指標(相対幹距比)と下層植生の植被率との間には正の相関がみられたが,林況を表す指標(樹高,直径,枝下高等)との間の相関は低かった。
下層植生の植被率と表土流亡の危険性を表す指標(危険度指数)の間には負の相関がみられ,下層植生の量が多いほど表土流亡の危険性が低かった。ササ(ミヤコザサ)やシダ(ウラジロまたはコシダ)が優占する林分では,その他の種が優占する林床に比べて危険度指数が低かった。ヒノキ人工林の下層植生を,既往研究を参考に表土流亡の抑止効果に着目して,ウラジロ・コシダ型,ササ型,草本・地表植生型,木本型,貧植生型に分類した。タイプごとの植被率には,ウラジロ・コシダ型>ササ型≒草本・地表植生型≒木本型>貧植生型の関係がみられた。このうちササ型,草本・地表植生型,木本型の植被率は大きく変わらなかった。一方,危険度指数には,ウラジロ・コシダ型<ササ型<草本・地表植生型<木本型≒貧植生型の関係がみられた。つまり,表土流亡の抑止効果は,植被率が同じ程度であっても優占する植物の種類によって異なることが示唆された。


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