| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-427  (Poster presentation)

日本全国集団を用いたヒメアオキの雄特異的ゲノム領域の探索

*鳥丸猛(三重大院生資), 大場将平(三重大生資), 永松大(鳥取大地域), 松下通也(森林総研林木育種セ), 赤田辰治(弘前大農生), 西谷信一郎(大阪府立箕面東高等学校)

動植物の性を識別する遺伝マーカーを開発するためには、性特異的なゲノム領域を単離することが必要不可欠である。そのために、これまでゲノム中の任意の場所を増幅するプライマーを用いて性特異的なPCR増幅産物を探索したり、あるいは次世代シークエンシング技術によって性表現間で異なるゲノム領域を探索することが行われてきたが、これらの方法は網羅的な方法であるためにコストや時間に多くを費やす可能性もある。一方、各々の性表現を示す個体由来のDNAの断片をPCR増幅した後にサブトラクションする方法は、一方の性に特異的なゲノム領域を効率的に濃縮できる可能性を秘めているが、使用する各々の性表現のサンプル数が少ない場合、性染色体以外のサンプル間のゲノムの個体差(ノイズ)を多数検出してしまう。そこで本研究は、雌雄異株性常緑低木種のヒメアオキを対象に選び、日本全国のヒメアオキの分布域から採取した雌雄のDNAサンプルに対してサブトラクションを行うことによって、性特異的なゲノム領域をより効率よく探索できるか検証することを目的とした。5地域(青森、新潟、福井、大阪、鳥取)からそれぞれ雌雄の幹を2~4本ずつ採取し、各集団に対してサブトラクション法の一種であるRDA(Representational Difference Analysis)法を適用した。青森のサンプルを用いRDA法を適用して雄特異的なゲノム領域を濃縮した結果、700bp、900bp、1100bp、および1400bp付近に明瞭なバンドが確認された。さらに本報告では、他地域のサンプルについても同様にRDA法を適用して濃縮されたゲノム領域を報告するとともに、採取地域にわたって確認される共通したゲノム断片をサンプル間のゲノムの個体差(ノイズ)に由来しない雄特異的なゲノム領域として捉え、そのゲノム領域に対して性を識別する遺伝マーカーが開発可能かどうか検証する。


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