| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-428  (Poster presentation)

富士山森林限界における森林限界の拡大パターンと個体群・成長動態

*Naoki MIYACHI(茨城大学), Yasuo Yamamura(茨城大学), Takasi Nakano(富士山科学研究所), タイスケ Yasuda(富士山科学研究所)

 富士山は、火山噴火後の一次遷移の進行によって現在も森林限界が上方へ移動していると考えられるが、植生発達と地形およびそれに関連した環境条件との関係は明らかでない。本研究は、火山地での森林限界植生の形成過程と拡大のメカニズムを明らかにするため、①山頂方向に伸びた半島状植生に設置された永久調査区の再調査によって樹木の個体群動態と成長動態を解析し、②半島状植生の拡大速度と微地形との関係を解析した。
 以下に結果と考察を述べる。
( 1 ) 調査した森林限界植生は、12年間で調査区内の裸地で断面積合計が増加したことから拡大したことがわかった。他の研究で南斜面でも森林限界植生の拡大が確認されており、富士山の森林限界が全域で上昇の途上にあることがより明確になった。
( 2 ) 森林限界植生の拡大速度は、地形のため強風に晒されると考えられる風下側で大きく、相対的に風が弱まると考えられる風上側では小さかった。この結果は強風による飛礫や氷片による物理的なダメージ、スコリアの移動や乾燥が尾根部での拡大速度の低さの原因と考えられた。
( 3 ) 先駆樹種の成長速度は、森林内より裸地で大きく、東西の同じ立地(森林と裸地)で比較した場合、成木より稚樹・実生で差が大きかった。この結果は、成長が、風条件より光条件によって制限され、その影響は稚樹・実生でより顕著であることを示唆する。
( 4 ) 森林限界植生で雪解けの時期に差があった。早い雪解けは、早春の低温のために生存を制限するが雪解けの早い地点の方が生存率が高く、富士山森林限界では制限要因でないことを示唆する。


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