| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-P-443  (Poster presentation)

裸子植物と被子植物の光呼吸経路は本当に同じなのか?

*宮澤真一(森林総合研究所), 遊川知久(国立科学博物館・筑波実験植物園), 河原孝行(森林総合研究所)

葉の光呼吸代謝は、植物の純CO2固定速度を決定する重要な代謝反応である。草本植物を用いた先行研究によって、光呼吸の代謝経路にはグルタミン合成酵素(Glutamine synthetase, GS)の1種である葉緑体型グルタミン合成酵素(GS2)が必須とされている。我々は発現遺伝子データベースやウェスタンブロッティング法を用いた解析によって、針葉樹であるスギはGS2遺伝子、およびGS2タンパク質が欠如していることを明らかにしてきた。
 そこで、このようなGS2の欠如が針葉樹を含む裸子植物に特有な現象かどうかを検証するため、原始的な被子植物であるアンボレラを含む被子植物11種類(草本2種、木本9種)、針葉樹、グネツム、マオウ、ウェルウィッチア、ソテツ、イチョウを含む裸子植物18種類について、抗GS抗体を用いたウェスタンブロッティング法により、葉に含まれるGS2タンパク質の有無を調べた。
 その結果、アンボレラを除く全ての被子植物と裸子植物のイチョウについては細胞質型GS(GS1)タンパク質とGS2タンパク質に相当する両方のバンドが検出された。一方で、イチョウ以外の全ての裸子植物についてはGS1に相当するバンドのみが検出された。また、アンボレラはGS2タンパク質が検出されなかったものの、公開されている発現遺伝子データベースを解析した結果、草本植物シロイヌナズナのGS2遺伝子と相同性の高いGS遺伝子を有していることが明らかになった。
 以上の結果から、光呼吸代謝の必須酵素であるGS2はイチョウを除く裸子植物全般に欠如しており、GS2の獲得・発達は草本や木本植物といった植物の生活型とは関係なく、植物の系統に強く影響を受けていることが明らかとなった。


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