| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-P-447  (Poster presentation)

塩生植物数種における満潮時の沈水がフラボノイド蓄積に与える影響

*上原歩(東京電機大学/理工学部/生命理工学系, 国立科学博物館/植物研究部), 村井良徳(国立科学博物館/植物研究部), 瀬戸口浩彰(京都大学大学院/人間・環境学研究科), 岩科司(国立科学博物館/植物研究部)

 ヒユ科のハママツナ(Suaeda maritima)、イソマツ科のハマサジ(Limonium tetragonum)、そしてキク科のフクド(Artemisia fukudo)はいずれも塩生植物である。これらは日差しを遮るものが無い砂浜、かつ満潮時には海水に沈水するような場所に生育することから、光や塩に関するストレスにさらされていると考えられる。一般的に植物の葉に蓄積されるフラボノイドは各種の環境ストレスに対する防御物質として機能することが知られている。そこで、これら塩生植物の葉に存在するフラボノイドの機能を推定するため、満潮時に海水に沈む場所(沈水区)と沈まない場所(非沈水区)に生育する個体を用い、それぞれの葉に含まれる総フラボノイド量の変動と葉内のフラボノイド蓄積位置について調査をおこなった。
 6月、8月および10月に、沈水区と非沈水区に生育する個体の総フラボノイド量を比較した結果、全ての種において、いずれの月も非沈水区で有意に高い値を示した。また、葉内のフラボノイドを染色後、蛍光顕微鏡で観察した結果、いずれの種も太陽光が照射される面に蓄積する傾向を示した。塩ストレスの指標として塩類濃度を示すEC値、光ストレスの指標として積算日射量を測定したところ、塩ストレスは沈水区、光ストレスは非沈水区で強いと考えられた。以上より、フラボノイドの蓄積は紫外線のような太陽光由来のストレスに対して応答していると考えられた。沈水区で積算日射量が減少した理由としては、沈水による太陽光の遮蔽による影響とあわせ、沈水時に葉に付着する泥の影響が考えられた。イボタノキ属植物において、光の強弱が乾燥ストレス処理時のフラボノイド蓄積に影響を与えることが報告されており、塩生植物においても日射量がフラボノイド蓄積に影響を与えたと推察される。


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