| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-P-450  (Poster presentation)

光照射パターンが開花フェノロジーにおよぼす影響

*冨松元(国立環境研究所 生物)

野外の光環境は時間的に極めて不均一である。光変動に対する動的光合成研究の多くは、単発的な光強度の変化にともなう光合成応答特性やそのメカニズムに関する内容であった。しかし、中長期的な光照射の変化パターンが植物の生理機能や生態特性におよぼす知見は少なく、未だにその影響がよく解っていない。そこで本研究では、近年普及してきた栽培用LED光源を用いて、異なる3つの光照射パターンで植物を栽培し、フェノロジー特性と成長速度におよぼす影響について調べた。供試植物は、気孔と生化学の影響を分離するため、気孔開放型のSL1-2株とその野生株Col-0株を用いた。栽培期間は、開花が確認できるまでのおよそ3ヶ月間とした。日長は、明期12時間と明期9時間の2条件とし、それぞれの明期の中で、強光と弱光をそれぞれ2:1の比率になるように割り振った。この時の光量子密度は、強光が約180μmolm-2s-1、弱光が約9μmolm-2s-1とした。これら強光と弱光の照射パターンは、強光の連続照射が4時間(日長が9時間のときは3時間)の“長時間照射パターン“、強光の連続照射が20分の“中時間照射パターン“、強光の連続照射が2分の“短時間照射パターン“の3処理とした。また、照射する3色LEDは、青色、緑色、赤色の構成比が、光量子密度ベースに2.5:1:1の比率になるように調整した。上記条件下で栽培した結果、栄養成長から繁殖成長への切り替わり(花茎の伸長開始)時期は、日長や品種に関わらず、“長時間照射パターン”の個体ほど早かった。一方、成長速度(葉面積の展開速度)は、日長によって変化し、長日条件(明期12時間)の時は“短時間照射パターン“で速く、短日条件(明期9時間)の時は“長時間照射パターン“で速かった。このように、植物のフェノロジー特性と成長速度は、日積算光量子密度と最大光量子密度が同じであっても、光の照射パターンによって変化する事が明らかになった。


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