| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-458  (Poster presentation)

ゲジゲジシダ(Thelypteris decursivepinnata)の倍数性変異が葉の形態的特性、光合成機能および生育地に及ぼす影響

*西田圭佑(京都工芸繊維大学), 中藤成美(東京都), 半場祐子(京都工芸繊維大学)

倍数性変異は植物の形態や生理機能を変化させ、進化に寄与してきたと考えられている。シダ植物でも倍数性個体は多く知られており、現在確認されている種への分化において倍数化の影響は無視できない。一般的に植物において高倍数性個体は低倍数性個体よりも葉肉細胞のサイズが増加することが知られている。このような葉の形態変化は植物の光合成機能に影響し、生育環境を変化させる可能性がある。ゲジゲジシダ(Thelypteris decursivepinnata)は2倍体と4倍体が存在し、2倍体は林床下に4倍体は崖や石垣での生育が観察されている。この研究はゲジゲジシダの倍数性間の生育環境の差異を定量的に明らかにし、染色体の倍数化が葉の形態および光合成機能に与える影響を明らかにする。調査地は東京都あきる野市とし、ゲジゲジシダ生息地の明るさを上空開空度、乾燥ストレス強度を炭素安定同位体比により評価した。また、採取した各倍数性個体を温室内で栽培し、光合成機能、気孔および葉の内部構造、クロロフィル含量を測定した。上空開空度および炭素安定同位体により4倍体は2倍体よりも明るく、乾燥した環境に生育していることがわかった。また4倍体は2倍体よりも光合成速度、気孔コンダクタンス、最大カルボキシル化速度が高いことがわかった。一方クロロフィルa、b量、a/b比には倍数性間で有意な差が無かった。
以上のことから、ゲジゲジシダにおいて染色体の倍数化は高い光合成機能ををもたらし、陽地への進出を可能にしたことが示唆された。


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