| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-459  (Poster presentation)

総生産に対する曇天下光合成の寄与:モデルを用いた評価

*伊藤昭彦(国立環境研究所, 海洋研究開発機構)

植物群落が、曇天下で主成分となる散乱光を光合成生産に有効利用していることが指摘されている。しかし、雲被覆などで日射条件が空間的に不均一となる広域スケールにおいて、曇天時の群落光合成が、総生産に果たす寄与は量的に把握されていない。曇天下では直達光・散乱光の割合だけでなく温度や湿度も変化し、さらに衛星リモセンでも観測が難しいなどの課題も残されている。本研究では、広域スケールの生態系モデル(VISIT)数値計算により、曇天時の光合成生産による総生産への寄与を推定する。現在利用可能な最も高分解能な気象データを利用し、1時間程度の時間ステップで全天日射とその散乱成分を推定して、生態系モデルへの入力データとする。キャノピー光合成は、直達光と散乱光の反射・散乱・吸収を扱え、気孔応答によるガス交換制御を考慮したスキームを用いて推定し、一定条件(大気上端と地上の日射量比)での光合成量を集計する。その際、同時に得られるキャノピーでの受光量や蒸散速度に基づいて、光利用効率や水利用効率についても解析を行う。さらに観測に基づくアプローチとして、微気象学的方法によるフラックス観測データベースを利用し、種類が異なる代表的なサイトを対象に、気象条件(日射、温度、湿度)と群落CO2交換について、昼間の晴天時と曇天時の寄与割合とその環境応答の違いを解析する。最終的に、モデル計算と観測データの分析結果を比較検討し、総合的な考察を行う。


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