| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S10-6  (Lecture in Symposium)

ハワイフトモモにおける種内ニッチ多様化のゲノム解析

*伊津野彩子(University of Zurich), 北山兼弘(京都大学), 小野田雄介(京都大学), 辻井悠希(京都大学), 永野惇(龍谷大学), 本庄三恵(京都大学), 畠山雅臣(University of Zurich), 清水(稲継)理恵(University of Zurich), 工藤洋(京都大学), 清水健太郎(University of Zurich), 井鷺裕司(京都大学)

ハワイ諸島の固有樹種であるハワイフトモモ (フトモモ科) は、島内の多様な環境に生育し、幅広い生態ニッチを優占する。環境の異なる集団間では、樹高や葉形質に著しい種内変異が観察される。本研究では、広域ニッチを占める本種のゲノムが、どの程度種内で分化しているかを明らかにするため、新たに構築したリファレンスゲノム配列 (N50 > 5M bp) とRAD-seqにより得られた1659 SNP遺伝子座を用いて、ハワイ島マウナロア山麓の9集団の集団遺伝構造を調べた。その結果、大部分のSNP遺伝子座においては、集団間の遺伝的分化は小さかったが、34 SNP遺伝子座 (2%) は中立進化から外れた集団間分化パターンを示しており、それらの近傍には、気温や降水量変化への応答に関与すると思われる遺伝子が見出された。従って、ハワイフトモモは、急速なニッチ多様化や大きな遺伝子流動により、環境の異なる集団間においても、ゲノム大半において遺伝的差異は小さい一方、集団ごとに異なる自然選択が強く働くため、適応的形質に関連する一部の遺伝子座において大きな集団間分化が生じていることが示唆された。


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