| 要旨トップ | ESJ64 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S11  3月16日 9:00-12:00 C会場

温室効果ガス観測衛星の環境科学への貢献と将来の展望

野田響(国環研・地球センター)

現在,二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)を始めとする温室効果ガス(GHG)の大気中濃度上昇による気候変動は地球規模で進行しており喫緊の課題となっている。しかし,陸域生態系や海洋によるCO2吸収過程や,大気・陸域生態系・海洋間の炭素循環に関わる気候フィードバックについては必ずしも十分に理解されておらず,将来予測の不確実性の要因となっている。そのため,これらのGHG濃度の時空間分布を把握するとともに,その吸収・放出の変動,それを駆動する物理的・化学的・生態学的メカニズムについて知見を得ることが必要とされている。人工衛星によるGHG観測は,全球規模で連続的かつ系統的に時空間分布を観測することを可能し,将来の気候変動予測および影響評価において有効な気候システムモデルの信頼性を高めることに貢献すると期待できる。環境省/JAXA/国立環境研究所では,共同プロジェクトとして温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打ち上げ,2009年から全球のCO2とCH4を観測してきた。また,GOSAT観測は陸域植生が発するクロロフィル蛍光強度の推定にも有効であり,陸域生態系光合成機能推定への応用が期待されている。2018年度には後継機となるGOSAT-2の打ち上げが予定されている。
本シンポジウムでは,GOSATのこれまでの成果と環境科学分野で果たしてきた役割について紹介するとともに,大気科学研究,地球システムモデル研究,生態系リモートセンシングの各分野と,さらに生態系観測ネットワークや地球観測コミュニティとの関わりとGOSAT-2を含めた将来計画への期待と展望について,それぞれ講演を行う。多くの生態学会大会参加者には馴染みがないであろう温室効果ガス観測衛星について,広く知ってもらうとともに,将来,生態学分野との連携により,更なる学際研究が発展するきっかけのひとつとなることを期待している。

[S11-1] GOSATシリーズにおけるこれまでの成果と今後の展望 齊藤誠(国立環境研究所)

[S11-2] 大気科学の視点から ー現場観測に基づく広域CO2濃度分布理解の進展 澤庸介(気象研究所)

[S11-3] 地球システムモデルの視点から 羽島知洋(海洋開発機構)

[S11-4] 生態系リモートセンシングの視点から 小林秀樹(海洋研究開発機構)

[S11-5] 陸上生態系のin-situ観測ネットワークと衛星観測の研究連携の展望 村岡裕由(岐阜大学)


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