| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T01-5  (Lecture in Workshop)

コメント:田んぼまわりで魚捕りをする際に心がけていること

*鈴木正貴(岩手県立大学)

 田んぼまわりの生きものに関心を抱き,魚類や両性類,貝類を対象に調査・研究するようになって久しい.その間,学生から技術系職員,そして現職の大学教員へと立場を変えつつも,農村に赴く際には,学生時代に恩師から学んだ「調査をさせて頂いている者であること」を忘れないようにしている.研究フィールドを拝借する立場なのだから,まず,自分という存在を地域に馴染ませることから始めなければならない.そして,調査中に地域の方から声を掛けられれば,手を休めて尋ねられたことに答える.さらには,集落の会合の合間に少し時間を貰うなどして,地域の方々に調査結果を分かりやすく伝える.
 こうした現場における「手間」は,限られた時間を有効に利用して研究成果を得る研究者にとっては,無駄に時間を費やしているとしか思えないかもしれない.論文や書籍などの媒体を使って成果を公表すれば,研究者としての責務は果たせるだろう.しかしながら,自分の研究成果が現場で利活用されることを願っていない研究者もいないと思う.私は,これまでの経験から,現地で調査する研究者の地域の方々に対する接し方が,研究成果の利活用の可能性,すなわち,その地域に生息・生育する動植物に対する住民の保全意識の醸成に,少なからず影響を及ぼすと考えている.
 調査対象地区において,将来,ほ場整備など農村環境の改変を伴う事業が計画されるかもしれない.その際,事業担当者が動植物の保全について地域住民に理解を求める場面で,すでに住民との間で一定の信頼関係を築いている研究者の存在は貴重だと思われる.ここでは,岩手県内の2つの地区を主な事例として,学生とともに実施している取り組みについて紹介する.


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