| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T03-2  (Lecture in Workshop)

動物に運ばれる種子:動物の行動研究と種子散布研究のつながり

*小池伸介(東京農工大学)

種子が母樹から離れて運ばれる種子散布は、将来の森林の樹木の配置を決め、森林の姿を形作る上で大きな影響を与える。周食型種子散布の場合、どこに種子が運ばれるかは、種子散布者である動物の行動特性に大きく影響される。これまで、どの動物が、どこに種子を散布しているのか、という問いに対して、動物各種のseed shadow(ある個体が生産した種子の空間分布)が明かにされてきた。その手法には、種子親に焦点をあてたアプローチと散布種子に焦点をあてたアプローチが存在する。この発表では、まず動物各種のseed shadowを求める手法について簡単に説明する。つづいて、種子を散布する動物の行動に注目した場合、動物の行動にはさまざまな内的要因と外的要因が影響するとともに、それらの相互作用を受けて、実際の行動は決定される。また、どのような時間・空間・分類スケールで、動物の行動をとらえるかによって、行動に影響する決定要因は変化する。そこで、動物の行動に影響を与える要因に注目した、seed shadowの算出に注目する。これまで、動物の行動(や影響する要因)に注目した種子散布のメカニズム解明はほとんど行われていない。しかし、動物生態学では、すでに動物の行動に影響する各種要因の解明や多重スケールでの研究の枠組みが構築されている。そのため、今後の動物による種子散布研究では、動物の行動に影響する要因に注目することで、これまでの種子散布のパターンの解明だけではなく、そのプロセスに注目した、階層的で多重スケールでのアプローチが求められるであろう。


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