| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T05-4  (Lecture in Workshop)

自然資本分布の将来予測とマリンレジャー利用の変遷:サンゴ礁を例に

*山北剛久(JAMSTEC, 広島大学), 安田仁奈(宮崎大学), 山野博哉(国立環境研究所)

 生物多様性の重要性のうち、重視される項目の1つに生態系サービスが挙げられる。2012 年に愛知目標達成のための政府間組織として設立された「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」においても中心課題である。サービスとは十分な資本(Stock)があることで、持続的に生み出されるフローとして理解される。この原理に基づき、生物多様性保全のために生態系自体の評価とサービスの定量化の両側面からのアプローチが近年進められている。

 まず、サービスのポテンシャルは資本すなわち生態系の健全性の評価によって推定可能である。そのため温暖化等の将来予測が行いやすい。一方で、実際に活用されるサービスの量は需要にも左右される。そのため生物多様性の持続可能な利用のためには、受益者側が生態系の価値をどう理解し、利用したいと思っているかを評価することも必要である。

 本発表では、主にサンゴ礁におけるダイビングについて、サンゴ自体の分布の変化をまず推定する。合わせて、利用の時間変化について今後可能な解析を議論することで、サービスの時間変動を示すことができるのか議論したい。

 予備的な結果から、サンゴ礁面積とダイビングスポット数の最大値に関係性があり、そのギャップは熱帯域で大きいが、温帯にも九州・四国を中心にギャップが見られている。温暖化のシナリオによるサンゴ礁の分布変化と比較すると、このギャップはさらに拡大することがわかった。
 需要面ではダイビングは1970年代以降に急速にレジャーとして広まっており、この需要がどのような場所で生じるのか、変動する環境に適応できるのか、人口など社会的背景との関係性についても検討したい。


日本生態学会