| 要旨トップ | ESJ64 自由集会 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


自由集会 W21  3月15日 18:00-20:00 K会場

言語多様性の恩恵と科学における創造性:生態学における英語化を考える2

島谷健一郎(統計数理研究所)

生態学に携わっていると、生物多様性に触れ、その価値を体験的に理解する機会がたくさんあります。この学会には、その消失へ警鐘を鳴らし社会へ提言している人も数多くいます。そんな生物多様性以上に現在急速に失われているのが言語多様性です。現在世界にある約6000の言語の50-95%が今世紀中に消失すると予測されています。生物多様性を知る人にとって、言語や文化の多様性の消失も看過できない問題に映ることでしょう。
言語多様性消失と無関係でないのが、今の日本の英語偏重です。講義は英語でする、ゼミを英語でする、社内公用語を英語とする、小学校から英語を学ぶ、… 。確かに論文の大半が英語で公表されている今日、英語は生態学研究に不可欠です。しかし、「使える英語」という実利だけが英語のもたらす恩恵ではありません。本来、外国語を学ぶ目的の第1は、異文化を知り視野を広げるところにあり、それは科学研究では創造性を育む源です。英語という単一言語でなく、言語多様性の恵みを享受した生物多様性研究が望ましいのではないでしょうか。
この自由集会では、地球上に共存する数多くの言語を調べる中から「英語の害毒」(新潮新書)を出版された永井忠孝氏と、多様な科学者と接する中から「日本語の科学が世界を変える」(筑摩選書)を出版された松尾義之氏を招聘し、生態学で望まれる外国語との付き合い方を考えます。

コメンテータ:施光恒(九州大. 昨年の「生態学における英語化を考える」自由集会で、「英語化政策にはらむ危険性」について「グローバル化=英語化=進歩 は正しいか?」に始まる講演をしてくれました)、田中健太(筑波大菅平セ)

[W21-1] 趣旨説明に代えて:複数の言語で科学を学び論じる意義とその困難 島谷健一郎(統計数理研)

[W21-2] 言語多様性の恩恵:視野を広げる外国語と視野を狭める英語偏重 永井忠孝(青山学院大)

[W21-3] 言語多様性が支える科学の創造性 松尾義之(白日社編集長)


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