| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


第21回 日本生態学会宮地賞受賞記念講演

生物多様性情報学:器用富豪のナチュラルヒストリー

大澤 剛士((研)農研機構 農業環境変動研究センター)

生物多様性情報学は、その名のとおり生物多様性科学と情報学の中間に位置する比較的新しい分野である。演者はこれを、生態学も含む様々な生物学の基盤に位置する分野と捉えており、自身の研究を表現する際、『生物多様性情報に基づいた生態学研究』と称することが多い。基盤に位置する分野であることは、他分野とのコラボレーションがしやすいことも意味しており、実際にこれまで非常に多様な分野、分類群を対象とした共同研究に取り組む機会に恵まれてきた。一方、演者は生物多様性情報学を、自然史研究(ナチュラルヒストリー)の一部であるとも捉えている。自然史研究といった場合、長期的な野外観測や標本調査に基づくものを想像し、情報学とは縁遠いものと考える方が多いのではないだろうか。しかし、私は生物多様性情報学という考え方によって自然史研究の価値を再確認し、様々な自然史に触れ、新しい楽しみ方を見出してきたと感じている。歴史ある自然史研究を、情報学という新しい道具で楽しむ生物多様性情報学は、まさに温故知新の研究アプローチなのである。本講演では、演者の研究や研究に対する考え方等の紹介を通し、生物多様性情報、ひいては自然史の楽しみ方を、特に学生等の若い世代に伝えたい。


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