| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-02  (Oral presentation)

市街地付近でのツキノワグマの出没と市民生活への影響-地域住民による目撃情報の収集-

*宮﨑博之(秋田県大院・生物資源), 星崎和彦(秋田県大・生物資源)

 近年、里地や市街地付近での野生動物の出没が問題となっている。市街地付近でのこの問題への対処には、住民にとって農林業被害や日常生活などのうち何が問題なのかを具体的に特定すべきであろう。そこで、2016年にツキノワグマの大量出没を経験した秋田県秋田市外旭川地区を対象に全戸アンケートを実施し、経済活動への影響と生活の不自由さの程度を評価した。さらに、このアンケートと警察署への聞き取りからクマの目撃場所を収集し、両者の一致度を検討した。
 752人の住民から得た回答を分析した結果、農業を含め仕事に影響を受けた住民は少なく、クマが毎年出没している地域ほど外出を控える住民の割合が多かった。このことからこの地域でのクマの大量出没は、労働全般に関する経済活動への影響よりも生活の質の低下の問題だといえるだろう。2016年のクマの目撃情報は、警察署と地域住民から全45件得られた。このうち23件は警察署には報告されておらず、特定の住民のみが知っている情報であった。警察署と地域住民による目撃情報の両方を地域内で即時に共有できれば、住民自身が生活圏内でのクマとの遭遇を減らす有効な情報になり得ると考えられる。


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