| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-06  (Oral presentation)

日本で最後のニホンカワウソ個体が複数いた可能性

*加藤元海(高知大学)

ニホンカワウソは、以前は日本に広く生息していたカワウソ属の1種であるが、1979年に高知県須崎市の新荘川で目撃された個体を最後に現在では絶滅種となっている。最後のニホンカワウソ個体に関して、目撃日時や場所に関する情報が乏しかったため、その行動範囲や個体数などの詳細は分かっていない。本研究では、須崎市教育委員会生涯学習課に保管されていたニホンカワウソの目撃情報の日時と場所を整理して最後の個体の動向を明らかにすることを目的とした。その結果、最後の個体の性別と身体的特徴、人馴れに関する情報が得られた。性別に関しては、人によって捕獲されて逆さ吊りにされた個体はメス(1974年7月)、アユ漁中の父子によって捕獲されてアユ10匹を餌として与えられた個体はメス(同7月)、深夜にセメント工場の食堂に侵入して捕獲された個体はオス(1975年9月)であった。身体的な特徴に関しては、1979年に、首にビニールのヒモが巻き付いていた個体とヒモが無かった個体が局所的に短期間に観察された。人馴れに関しては、人の気配を感じて逃げる個体がいた一方、子供たちが新荘川で遊泳中に近づいてきて悠々と泳ぐ個体もいた(1979年7-8月)。さらには、当時の大学生がニホンカワウソを捕獲して胴に縄をつけて道を歩いていたところ、通りがかった郵便局員に注意されて放獣したという情報もあった(1979年7月)。首に巻き付いていたヒモは、1979年8月に捕獲された際に外され、稲を束ねるナイロン製のヒモであることが確認されていた。保管資料を時空間的に整理した結果、短期間に局所的に身体的にも行動的にも特徴が異なる個体が観察されていたことが分かった。ニホンカワウソの寿命は10-15年と推定されていることから、本研究によって1979年の新荘川周辺には複数個体生存していた可能性が示唆された。


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