| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-03  (Oral presentation)

林床の光環境に対する樹形の応答は樹種の機能タイプによって異なるか

*中田貴子(筑波大・山岳科学), 廣田充(筑波大・生命環境系)

背の低い樹木は林床の不均一な光環境の中で光を獲得しなくてはならない。演者らは、これまでの研究で、林冠を構成する6樹種において、樹木が置かれた光環境によって樹冠の形を変えており、その変化が樹種ごとに異なることを明らかにした。しかし、林内には林冠構成種以外にも様々な樹種が存在しており、樹種によって樹冠の形の応答が異なるだけでなく、その応答が樹種タイプによって異なる可能性もある。本研究では、樹木の機能タイプによって、光環境に対する樹冠の形の応答が異なるのではないかと仮説を立て、特に暗い光環境下で生育する様々な樹木の背の低い樹木の光環境に対する樹冠の形の変化を調査した。

2017年7〜10月に長野県4か所と茨城県1か所で22樹種の樹高2~5 mの稚樹を対象とした。各調査地に調査区を設置し、区内の対象種の中から10~15個体ずつランダムに選抜した。各個体の樹高、樹冠長、樹冠面積、根元を基準とした樹冠の偏り、開放地に対する樹冠上の相対光強度を測定・算出した。調査した22樹種は各種ごとに成熟背丈(高木種or低木種)と葉の寿命(落葉樹or常緑樹)、耐陰性(陽樹or陰樹)のそれぞれどちらかに区分した。

成熟背丈、葉の寿命、耐陰性のそれぞれの区分で、光環境に対する樹冠の形の変化は異なっていた。成熟背丈について、光勾配に沿って高木種の樹冠長、低木種の樹冠面積と樹冠の偏りが変化していた。葉の寿命について、光勾配に沿って落葉樹の樹冠長、常緑樹の樹冠面積と樹冠の偏りが変化していた。耐陰性について、光環境に対して陽樹の樹冠長が変化しており、陰樹の変化はみられなかった。今回の結果から、樹種の光獲得戦略はそれぞれの機能タイプによって説明されることが示唆された。


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