| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-08  (Oral presentation)

鳥類の種子散布ネットワーク構造に影響を与える要因について

*大河原恭祐(金沢大学), 木村一也(金沢大学, 石川県森林組合), 佐藤文男(山階鳥類研究所)

果実食性の鳥類群集と植物群集との間には様々な環境で被食型種子散布を通じた共生系ネットワークが成立している。演者らは2005年から2016年にかけて福井県越前市織田山で実施されている鳥類標識調査で鳥種の糞や吐き出し物を採集、それらに含まれていた種子の種類や頻度を調べ、渡り鳥と植物群集間の種子散布ネットワークについて調査を行ってきた。ツグミ科やヒタキ科等、種子散布を担うグループを対象に調べたところ、総計16種6652個体から62種1671例の植物種子が採集され、主要な運搬種はツグミ科のシロハラ、マミチャジナイとメジロ科のメジロの3種であった。ネットワーク構造の特徴は年によって変化していたが、このツグミ科2種の飛来個体数の増加はネットワークに高い入れ子型構造を構築し安定化に貢献していた。今回、ネットワーク構造を決定する他の要因についてさらに解析と検証を行い、特に特殊化した相互作用と関連するモジュラー構造に着目した解析を行った。ネットワークでは主に上記の運搬種3種を中心に4-5個のモジュールが形成されていたが、特にツグミ科2種の飛来数が多い年は、この2種をコアとした他の鳥種を多く含むモジュールが形成されていた。また渡り鳥の飛来数が少ない年や果実量の少ない年は主要3種とは独立したモジュールが形成されやすく、ネットワークを構成する種数や個体数の減少によって特異的な相互作用系が発達していた。またメジロは常に主要種のツグミ科2種とは異なるモジュールを形成し、単独でカラスザンショウ、アカメガシワ等の数種の植物とモジュールを形成していた。この事は本種には特殊化した種子散布系があることを示唆している。このようにネットワーク構造における特殊化した相互作用系の構築の要因についてさらに考察する。


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