| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-02  (Oral presentation)

温暖化とアメリカシロヒトリの化性変化

*都野展子, 松浦崇裕(金沢大学)

アメリカシロヒトリ Hyphantria cunea Drury (鱗翅目 ヒトリガ科)は北米原産外来種で, 1945年に東京で発見され, 関東を中心に拡がり石川県では1954年に発生が確認されている(中田1995). 本種は侵入当初2化性であったが,北緯36度以南では3化性に増加が可能であると報告されている(五味1992). 
石川県金沢市役所は2004年からフェロモントラップによるアメリカシロヒトリの発生予察を発生期間中毎週行っている. 市役所から提供を受けた14年間のトラップ捕獲個体数記録と気象記録や位置情報との関係を解析した結果,越冬世代羽化個体数は越冬期間の気温と負の相関を示し,越冬世代の次世代で6月に幼虫期を過ごす夏世代は6月の気温と正の相関,および山林からの距離と負の相関を示した.8月下旬以降に羽化してくる秋世代は6月の高温と正の相関を示した.越冬世代と暖冬の関係については,本大会ポスターで松浦が発表する.夏世代と秋世代の発生消長は6月の気温が重要な環境要因であることが解析結果により示唆されたため,この時期の幼虫を22℃,25℃,28℃の恒温,および野外(平均気温21.5℃)で飼育し,幼虫期の気温と蛹期間の関係を調べた.結果,28℃飼育個体で蛹期間の延長はやや増長したが,すべての飼育温度で,蛹期間が著しく延長された個体や翌春まで羽化しない一化性を示す個体の存在が確認された.このことは温暖化はアメリカシロヒトリにとり成長できる期間を長くするよりも,成長に適さない高温期間を長くしており,2化性から1化性へと世代数は減る方向へ向かっていると考えられた.


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