| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-05  (Oral presentation)

佐渡島の河川で採集された魚類の回遊パタン

*飯田碧(新潟大理臨海), 安房田智司(大阪市大院理学), 小黒環(新潟大院自然科学), 木戸杏香(新潟大理), 白井厚太朗(東大大気海洋研), 満尾世志人(新潟大朱鷺・自然再生)

淡水に生息する魚類の中には生活史の一時期を海で過ごす通し回遊魚が多く知られている。島の淡水に生息する魚類は,陸続きであった時代のなごり,もしくは,祖先が海を渡ってきたものとされる。近年の熱帯島嶼域での研究により,島の淡水魚は長距離・長期間の分散・回遊に関わる生活史特性をもつものが多く報告されている。一方,北方の離島の淡水域に生息する魚類の回遊特性はほとんど知られていない。そこで本研究では,日本海の佐渡島の河川を対象として,そこに生息する魚類の回遊パタンを明らかにすることを目的とした。佐渡島には100以上の河川があり,島の東西や南北で地形や河川環境が異なる。2015–2017年に佐渡島の18河川の河口から中流域で手網により魚類を採集した。得られたハゼ亜目 (ウキゴリ属,ヨシノボリ属,チチブ,ミミズハゼ),カジカ属,アユの計約70個体について,耳石のSr:Ca比を用いて回遊パタンの推定を行った。その結果,Sr:Ca比の値とそこから推定される回遊パタンは,大きく以下の3つに分かれた。1) 仔魚期を海で過ごし稚魚として河川へ加入後は河川に留まる典型的な両側回遊型 (スミウキゴリ,シマウキゴリ,ウキゴリ,シマヨシノボリ,ルリヨシノボリ,アユ),2) 典型的な両側回遊に加えて,河川加入後に一時期海へ戻るパタン (チチブ,ミミズハゼ),3) 淡水のみ,または汽水のみに生息し,ほとんど移動のないパタン (カジカ大卵型,カンキョウカジカ)。これらの3パタンに加えて,海から河川への加入の速度には個体差があると推測された。本研究の結果より,佐渡島の淡水域に生息する魚類の多くは両側回遊型であるが,種や地域による違いがみられ,それらは佐渡島の多様な地形や河川環境に関係すると推察された。


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