| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-11  (Oral presentation)

ボルネオの熱帯雨林に生息するクワガタムシ科の群集動態の解明

*上野弘人(九州大院・シス生), 佐竹暁子(九大・理・生物), 荒谷邦雄(九州大院・比文), 川津一隆(龍谷大・理工), Paulus Meleng(Sarawak Forest Dep.), 市岡孝朗(京都大・人環)

東南アジアの熱帯雨林地帯は乾燥期や低温期がない一方で、強い干魃が平均すると数年に1度の間隔で不定期に発生するという特徴を持つ。これまでの研究で、このような気象条件と昆虫の個体群動態の関係について、1)気象環境の季節性が弱いにも関わらず昆虫群集の変動パターンは動的であること、2)大規模な干魃が複数の昆虫種の変動に影響すること、が分かっている。しかしながら、これまでの対象種は主に食植性昆虫に限られており、他の餌資源を利用する昆虫群集もこの食植性昆虫と同じ変動パターンを示すとは限らないため、より一般的な昆虫群集の変動パターンの解明には対象の分類群を様々なギルドにまで広げる必要がある。
そこでわれわれは、餌資源の違いから食植生昆虫とは異なる動態パターンを示す可能性がある腐朽材食性昆虫に着目し、個体数変動における年周期(季節性)の有無、エルニーニョ現象に伴う干魃が群集の多様度に及ぼす影響、温度や降水量ななどの気象条件が群集動態に与える影響を順に、ANOVA、Simpsonの多様度指数、非線形時系列解析Convergent Cross Mappingを用いて分析した。この分析は、東南アジアの熱帯雨林地帯の中心に位置するボルネオ島・ランビルヒルズ国立公園において、3つの高さ(1、17、35m)に設置されたライトトラップによって7年間にわたって毎月採集されたクワガタムシ科甲虫のうち、幼虫が腐朽材食性とみなされる34種のデータを用いて実施された。その結果、第2四半期(4-6月の3ヶ月間)に個体数のピークをもつ周期性が認められ、干魃の後には、多様度指数の大幅な低下が3年の間に3回認められた。さらに、5日間の積算温度が4日後、3日間の積算降水量が53日後の個体数を顕著に制御していることが検出された。発表では、これらの結果にサンプルの設置位置の情報を加え、気象要因と動態パターンの関係、さらに干魃が腐朽材食性昆虫群集に与える影響について考察する。


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