| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-001  (Poster presentation)

自動撮影カメラによるカントウマムシグサの量的に有効な種子散布者の解明

*前田大成, 大石里歩子, 北村俊平(石川県立大学)

 林床で結実する植物など、訪問動物の直接観察が困難なシステムでは、代替手法として、自動撮影カメラを応用した研究が増加している。本研究では、自動撮影カメラを用いて、カントウマムシグサArisaema serratumの果実食者と果実持ち去り数を4年間のデータに基づき定量化し、その量的に有効な種子散布者を解明することを目的とした。
 石川県の金沢大学角間地区(角間)および石川県林業試験場(林試)において、カントウマムシグサ計90個体(2013年度:11個体、2014年度:20個体、2015年度:29個体、2016年度:30個体)の結実時期(10月-3月)に、自動撮影カメラFieldnoteDUO(2013-2015年度)とLtl-Acorn6210(2016年度)を設置し、訪問と果実持ち去り動物を記録した。本研究では「訪問」の定義を、動物が映像内に記録された時点とした。
 鳥類9種(ヒヨドリ、シロハラ、コマドリ、トラツグミ、ジョウビタキ、マミジロ、ヤマドリ、ルリビタキ、マミチャジナイ)と哺乳類2種(アカネズミ類、ニホンザル)が果実を持ち去った。果実を持ち去った動物の種構成は調査地・年度ごとに変動した(角間:3-5種、林試:2-7種)が、ヒヨドリ、シロハラ、コマドリは両調査地から、ほぼ毎年果実を持ち去った。2013-2016年度 の映像から計数された果実持ち去り数(角間:1545個、林試:2540個)の上位種は、角間ではヒヨドリ(49%)、シロハラ(32%)で、林試ではヒヨドリ(33%)、シロハラ(33%)であった。また2016年度のカントウマムシグサ30個体中、27個体はヒヨドリもしくはシロハラによって、残り3個体はコマドリによってほとんどの果実を持ち去られた。コマドリの果実持ち去り数は、角間では3%、林試では7%程度だったが、毎年、果実を持ち去っていた。
 以上の結果から、ヒヨドリとシロハラがカントウマムシグサの量的に有効な種子散布者であると考えられた。また、年度・個体によってはコマドリも量的に有効な種子散布者として機能すると考えられた。


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