| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-015  (Poster presentation)

カシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害のシミュレーション解析

*坂本杏子, 中桐斎之(兵庫県立大学)

日本海側を中心として、全国各地でカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の穿入を受けたブナ科樹木が枯死する被害が1980年代以降急速に拡大している。
カシナガは繁殖を行うために、ブナ科樹木に穿入し集合フェロモンを発生する。樹木周辺のカシナガ成虫は集合フェロモンにひきつけられ、その樹木に集中して穿入する集中攻撃(マスアタック)を行う。これによって枯死が起こり、ナラ枯れが引き起こされる。
前川ら(2016)によると、1年目は集合フェロモンの有効範囲とブナ科樹木同士の間隔を広くしていくと、樹木数を増やした時に集合フェロモンの有効範囲が重なる。この時、穿入したカシナガが集中して1本の樹木に集まる可能性が低くなるため、枯死率が増加から減少に転じることが分かっている。また、カシナガが潜入する樹木の周辺に別の樹木が多数存在すると穿入される樹木が分散することになるため、樹木が生き残りやすくなることが分かっている。

本研究ではこのナラ枯れについて、カシナガがブナ科樹木に穿入して2年目が経過した以降も、1年目と同様の結果が得られるのかを格子確率モデルを用いて解析を行った。その経過を10年目まで見ていくこととする。
モデルは100×100の格子を用意し、格子上に樹木、カシナガをランダムに配置し、カシナガが時間とともに移動を行って移動先が樹木の時に穿入が起こるとした。
2年目以降は前年に繁殖を行ったものとし、カシナガの数は、1ペアごとに25匹(加藤ら,2001)とした。更に、1年目に穿入を受けて生き残った樹木は2年目以降に枯れる可能性が低い(鎌田,2002)ことから、カシナガの穿入がストップするようにしたシミュレーションも行った。


日本生態学会