| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-115  (Poster presentation)

仔の成長に伴うイリオモテヤマネコメスの行動圏・繁殖巣の変化

*中鉢蒼, 伊澤雅子, 中西希(琉球大学)

 単独性で森林に生息するイリオモテヤマネコPrionailurus bengalensis iriomotensisの生態のうち、繁殖に関わる情報は少ない。本研究では育仔期のメスについて、仔の出産から独立までを連続的に追跡することを目指した。定期的に引っ越しを行うネコ科の繁殖巣の選択や利用パターン、仔の成長に伴うメスの行動圏や利用環境の変化から、イリオモテヤマネコの繁殖生態についての知見を得ることを目的とした。
 今回初めて、イリオモテヤマネコのメスの出産から育仔、仔の独立までを連続的に追跡することができた。メスは、仔ネコが生後約2.5か月までの間に重複しない6つの繁殖・育仔巣を利用したことが確認され、中でも本地域に特異的な環境である石灰岩地層の横穴を利用していたことが初めて明らかになった。仔ネコは生後約2か月には母ネコ不在時にも巣の周りを動き回る程に成長していた。この時を境に1つの巣の利用期間が短くなった。巣の利用期間は仔の成長に伴い短くなり、また、仔ネコが動けない頃に比べ開放的な巣環境を利用するようになったと考えられた。またこの頃には、離乳を開始していたと推測された。一方、出産および仔の成長段階に関わらず母ネコの1日の巣への滞在割合には大きな差がなく、1日の平均行動圏面積もほとんど変わらなかった。しかしながら、エネルギー要求の高まる育仔期は好適な餌場である後湊川を特に重点的に利用する傾向があった。また、仔ネコが生後約3.5か月で独立を開始した後も、時折母ネコとともに行動していたことも確認された。


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