| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-126  (Poster presentation)

フタオビドロバチ属2種の営巣生態と生活史

*辻井美咲(神戸女学院大学), 西本裕(宝塚市), 大西由里子(神戸女学院大学), 遠藤知二(神戸女学院大学)

 フタオビドロバチ属のオオフタオビドロバチ(以下、オオフタ)は、市街地から農地、二次林にいたる幅広い環境に生息する単独性カリバチであり、竹筒トラップに営巣する最普通種の1つである。近年、このハチと外部形態の類似したオデコフタオビドロバチ(以下、オデコ)が記載された。オデコは2010年以降、1府10県の日本各地で生息が確認されているが、その由来は不明であり、生態もほとんど明らかとなっていない。本研究では、竹筒トラップ調査によって得られた既存標本の検討と新たに行った野外調査にもとづいて、これらフタオビドロバチ属2種の兵庫県における分布とその動向を把握し、さらに両種の生活史、巣穴サイズの選好性、巣の構造、寄生者相などについての比較を行った。
 1990年代後半から兵庫県の各地で実施された竹筒トラップ調査によって得られた、およそ9670個体のフタオビドロバチ属標本を調べたところ、オデコは2007年にはじめて神崎郡神河町・市川町、姫路市安富町で確認された。これは今のところ知られているオデコのもっとも古い記録である。断続的に調査が行われた三田市・篠山市では、2002年までは少なくともオオフタだけだったが、2010年にオデコが出現し、場所によっては一時的にオデコに置き換わるなど、激しい盛衰を示し、両種の間にはきびしい競争があることがうかがわれた。
 両種の生活史を比較すると、オオフタはおもに7月と8月下旬~9月に営巣活動が見られる部分2化性であるのに対し、オデコの営巣期は8月の1回で年1化性だった。また、前蛹の色を比較すると、オデコの方が赤みを帯びていた。両種の巣の構造は酷似しており、空室数に違いはなかった。しかし、オデコは1つの営巣筒に多くの育室を連続的につくる傾向があり、一方、オオフタは空室長が長く、育室数は少なかった。これらの結果から、両種の営巣特性の違いについて考察する。


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