| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-140  (Poster presentation)

金華山島のシカの頭骨の31年間の変化

*池田鈴菜(麻布大学), 南正人(麻布大学), 高槻成紀(いのちの博物館), 大西信正(南アルプス生態邑), 樋口尚子(NPO法人あーすわーむ), 岡田あゆみ(北里大学), 塚田英晴(麻布大学)

島嶼個体群は小型化することが指摘されており、個体群密度の上昇による食料資源不足により起こると言われている。金華山島のニホンジカ(Cervus nippon 、以下シカとする)の個体数は約550頭前後で、環境収容力に達していると考えられており、栄養条件の悪化に伴う小型化や繁殖率の低下などが指摘されている。このような貧栄養下で、メス獲得のために社会器官である角への投資が必要なオスと必要のないメスでは頭蓋骨の形状にどのような差があるのだろうか。さらに、金華山島では30年間の間に、大小の個体群崩壊やそれからの回復などを経ながら、約350頭から約450頭の間で個体数変動が起こっている。このような個体数変動とそれに伴う食料資源状況の変化は、頭蓋骨と下顎骨の形状に影響を与えるのだろうか。1991年~2010年に計測された体重データ、1984年~2015年に採集された年齢が判明しているシカ頭蓋骨(雄:79, 雌:80)と下顎骨(雄:63, 雌:61)を用いて雌雄別に分析した。頭蓋骨と下顎骨はDriesh(1867)に従って計測した。頭蓋骨基底長とそれに対する各計測部位の比率により、頭蓋骨のプロポーションを雌雄で比較した。また、大量死や体重減少の時期を考慮した時期に区切り、その期間に生まれたコホートをその時期のサンプルとして、他の時期と比較した。頭蓋骨基底長に対する比率では、雄は雌より顔の幅や後頭部が広い傾向にあり、雌は歯や鼻、目、下顎骨が雄よりも大きい傾向にあった。1991年から2004年の間には雄・雌共に体重減少したが、頭蓋骨の縮小は見られなかった。頭蓋骨や下顎骨はこれらの部位以外は様々な時期に変化があったが、その変化は個体数変動や体重変動との間に統一的な法則性は見出せなかった。雌雄共に上顎の歯列長に変化が見られたが、この意味については今後検討する必要がある。


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