| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-203  (Poster presentation)

生物多様性普及活動の試みとその質的分析

*三島らすな, 倉本宣(明大・農)

わが国の環境省は2009年前後から、生物多様性とその価値を社会に浸透させる取り組みである「生物多様性の主流化」を推進してきた。しかし2014年に内閣府によって行われた世論調査の結果では、生物多様性という「言葉の意味を知っている」と答えた国民の割合は16.7%、「意味は知らないが言葉は聞いたことがある」と答えた国民の割合は29.7%であり、現在のところ生物多様性というものは多くの市民にとって馴染みのあるものになっているとは言えない。明治大学農学部応用植物生態学研究室では、生物多様性というものを市民に伝える活動である「生物多様性普及活動」を様々なアプローチで行ってきた。本研究では、生物多様性普及活動の1つの試みとして「自然おもしろ発見」を開発し、活動のどの部分がどう市民に影響を与え、市民にどのような意識変容が起こるのか明らかにすることを目的とした。「自然おもしろ発見」は生物多様性普及活動の中でも、人が生物多様性との直接的な関わりを通して自分自身で発見・発想することで、生物多様性を自分の言葉で表現できるようになることを目指した活動である。参加者とスタッフの計12名を対象に記述式アンケートを実施し、得られた回答を分析した。体験者にとって特に重要だった体験は以下の3つであると示唆された。1つ目は、生きものを視覚・聴覚・嗅覚・触覚などを積極的に使って観察する体験である。2つ目は、生きものに対して知識を身に付けるのではなく、自分自身で発見をして生きものを知る体験である。3つ目は、生物の観察にとどまらず、生きものから創作活動へ発展させるなど生きものから自由に発想を広げていく体験である。また複数の体験者に、生物多様性というものを自分の身体を通して実感した変容、生物多様性の価値をより身近で捉えるようになった変容が見られたことから、本活動は体験者に生物多様性というものを伝える効果を持っていることが示唆された。


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