| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-208  (Poster presentation)

環境DNA手法を用いた淡水ガメの検出系の確立

*河田萌音(神戸大院・発達), 上野真太郎(東大院・農), 亀崎直樹(岡山理科大, 須磨水), 谷口真理(須磨水), 源利文(神戸大・院・発達)

これまで、ある場所に淡水ガメが存在するかを確認するために、目視調査や罠を用いての捕獲調査が行われてきた。しかし、目視で確認できても罠にかからない、労力やコストが大きいなどの問題点があった。そこで、近年注目されている環境DNA手法を用いて、淡水ガメの在不在を確認する手法を開発し、ため池においてその手法の妥当性を検証した。環境DNAとは、水中に放たれたDNA断片のことであり、動植物の体表の粘液や排泄物、組織片などが由来であるとされる。この手法を用いてその地点に淡水ガメが生息しているかの検証を行った。調査は、岡山県内と兵庫県内のため池79地点(2015年)、岡山県内のため池100地点(2016年)で行なった。 2015年サンプルではミシシッピアカミミガメが捕獲された25池中4池、イシガメが捕獲された9池中0池、クサガメが捕獲された61池中4池であった。一方、捕獲調査で確認されなかったが環境DNAで生息が推定された地点はミシシッピアカミミガメが1池、イシガメが1池、クサガメが1池であった。2016年サンプルではミシシッピアカミミガメが捕獲された19池中12池、イシガメが捕獲された1池中0池、クサガメが捕獲された32池中6池であった。一方、捕獲調査で確認されなかったが環境DNAで生息が推定された地点はミシシッピアカミミガメが8池、イシガメが0池、クサガメが2池であった。また、2016年に採水のみ行なった地点(60池)で、環境DNAで生息が推定された地点数は、アカミミガメが18池、イシガメが5池、クサガメが5池であった。環境DNAの検出を高める改善策として、カメが活発に活動している時期での採水、採水量の増量が挙げられる。従来の手法よりも低いコストで対象種の生息を推定できるこの手法が適用されれば、ニホンイシガメの保全や外来の淡水ガメへの対策もさらに向上させることが期待できる。


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