| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-209  (Poster presentation)

水田管理と周辺環境が水生昆虫群集に与える影響

*渡辺黎也(筑波大・生物学類), 日下石碧(筑波大・院・保全生態), 横井智之(筑波大・院・保全生態)

 近年、圃場整備や近代農法の普及により水田に生息する水生昆虫の多くは減少傾向にある。そのため慣行農法の水田(慣行水田)に対し、殺虫剤や除草剤を使用しない環境配慮型農法の水田(有機水田)を推進する動きが多くなっている。しかし農法以外にも、水生昆虫の生息に関わる複数の要因が水田内外には存在するが、それらを考慮した研究は少ない。本研究では、水生昆虫群集(半翅目、鞘翅目)に水田内及び周辺環境の要因が与える影響を明らかにすることを目的とした。
 調査は2017年4月から9月までの期間、茨城県つくば市近郊の5地域から有機水田と慣行水田を1組以上、計16枚を対象に行なった。タモ網を用いた掬い取りを行ない、水生昆虫と餌生物の個体数を種もしくは分類群ごとに記録した。環境要因として、調査地ごとに水質(水温、水深、電気伝導度、pH)と水田内に生育する植物の植被率、薬剤使用の有無、湛水日数を調査した。水田及び周辺環境の面積についてはGISを用いて、各水田を中心とする半径3㎞のバッファー内に存在する水田、その他の水域、森林、耕作地、市街地の面積を算出した。
 調査の結果、水生昆虫の群集組成は農法によって異なっており、水田内の要因として湛水日数と餌個体数、水温が群集組成のばらつきを説明した。さらに各要因の効果を解析すると、水生昆虫の種数及び個体数に対しては餌個体数が、種数に対しては水温が正の効果を与えていた。一方で、農法は種数及び個体数に対して影響していなかった。以上より、水田に生息する水生昆虫群集を評価する際には農法だけでなく、餌個体数や水温などの生息環境に関わる要因についても考慮する必要があると考えられた。


日本生態学会