| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-215  (Poster presentation)

環境DNA手法によるヒダサンショウウオの定点モニタリング

*冨田勢(神戸大・院・発達), 神松幸弘(立命大・グローバル), 源利文(神戸大・院・発達)

サンショウウオ科は日本で29種の生息が知られているが、そのほとんどが絶滅危惧種で、保全のためには正確な生息情報の把握が必要である。発表者は2015年より、サンショウウオ科の保全のためのモニタリング手法として、ユニバーサルプライマーを用いたサンショウウオ科の環境DNA分析手法の開発を行っており、これまでに対象のうち10種の検出に成功している。本研究では、開発した検出系を用いて対象種の1種であるヒダサンショウウオ(Hynobius kimurae)の季節性をモニタリングするための定点調査を行い、マルチスケール占有モデルを用いて得られたデータからヒダサンショウウオの存在確率の推定を試みた。
2016年2月から10月にかけて、合計15回の定点調査を行い、のべ105地点中80地点のサンプルで、ヒダサンショウウオの環境DNAを検出した。調査流域上流の2地点において調査期間での検出・非検出に顕著な変化を観察した。それ以外の5地点では、最終日を除いて安定的にDNAが検出され、最終日では全地点でDNAが検出されなかった。これらの結果は、ヒダサンショウウオの産卵前後の成体や孵化後の幼生の移動を検出したものであると考えられる。また採水と同時に行った目視調査の結果を共変量として、ヒダサンショウウオの存在確率を推定することに成功した。存在確率を推定することで、環境DNA検出における偽陰性を考慮した分布推定を行うことができる。これらの結果は、サンショウウオのモニタリング手法としての環境DNA分析の有用性を示唆し、今後環境DNA分析を用いてモニタリングを行うための予備的なデータとして重要な知見となる可能性がある。


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