| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-250  (Poster presentation)

環境省事業「モニタリング1000」により作成された水生植物相調査マニュアルの評価

*平松栞(新潟大学), 首藤光太郎(新潟大学), 加藤将(日本国際湿地保全連合), 志賀隆(新潟大学)

 絶滅危惧種の多い在来水生植物を保全するためには,湖沼における水生植物の生育状況や環境のモニタリングが重要である.このような広域・長期にわたる水生植物相のモニタリングに資するため,環境省の重要生態系監視地域モニタリング推進事業(モニタリングサイト1000)の陸水域調査では,『水生植物調査マニュアル』が作成された.このマニュアルでは,現地調査の努力量を人数×日数により見積もった上で,湖沼内の複数地点に設けた定点から採集器を投擲することにより植物相データと出現頻度を取得する定点調査と,植物相を補完するための湖岸での踏査が設定された.しかし,このマニュアルで得られるデータの信頼性や努力量の見積もりが,湖沼の水生植物相を把握するうえで十分かどうかは検証されていない.そこで本研究では,水生植物調査マニュアルの評価を目的として,現地調査を行った.
 湖沼の水生植物相を把握するために必要な努力量を見積もるため,新潟県上越市の3湖沼で,2017年に現地調査を行った.マニュアルで設定された手法によって水生植物相を把握しきれない可能性を考慮して,当該マニュアルを基礎としながらも,定点の数,採集器の投擲回数,踏査距離などの作業量を段階的に増量した調査手法を設定した.
 その結果,いずれの湖沼においても,定点調査よりも踏査の方が,確認できた種類数が多かった.一方で,車軸藻類を代表に,踏査だけでは確認できない種類も一定数みられた.以上から,水生植物相を効率的に把握するためには,踏査を中心に,これを補完するために定点調査を行うことが望ましいと思われる.加えて,採集器の投擲回数や季節の違いによって得られる結果の差異や,それぞれの湖沼において最低限必要な定点数についても検討した.これらの調査結果から,湖沼の水生植物相を把握するために必要な努力量を湖沼のサイズなどを基準に一般化し,将来的にマニュアルの改訂を行う予定である.


日本生態学会