| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-257  (Poster presentation)

市民科学データからみる東京の蝶の餌資源利用

*海老原健吾(中大院・理工), 安川雅紀(東大), 鷲谷いづみ(中大・理工)

 「東京チョウモニタリング」は、「市民参加の生き物モニタリング調査(略称:いきモニ)」として、環境意識の高い組合員を多く擁する生活協同組合「パルシステム東京」と保全生態学研究室、喜連川研究室の3者の協働で進められている。いきモニの特徴は、蝶の同定に自信の無い初心者でも、写真を添付してインターネットを介して「いつどこで誰が何を見たか」を報告すれば、専門家の同定によって名前を知ることができるところにある。
 参加者が同定を含めて蝶について学習できることがインセンティブにもなり、大量のデータ収集が実現している。2009年より開始されたいきモニは、2016年現在までに35,980件のデータが報告され、累計614人が調査者として参加している。調査者は、任意で保全生態学研究室のメンバーが講師をつとめる研修会に参加し、保全生態学研究室が作成した「調査マニュアル」に沿って、都合の良い時間帯に都内の随意の場所で蝶の調査を行いインターネット上のデータアップロードツールをつかって報告する。
 アップロードされたデータは、保全生態学研究室のメンバーが画像による蝶の同定を行い、調査者の種名入力に間違いがあれば修正してデータベースを更新する。調査者は修正されたデータを確認して,正しい同定を学ぶことができる。2017年度からは送粉共生系にも着目し、共生市民科学に移行することを試みた。
 調査者が送信する写真には蝶の個体だけではなく、吸蜜植物なども写っている。そこで本研究では東京の蝶が利用する植物に着目し、写真に写る植物を同定し、2015年の報告と2017年の報告を比較し、共生に着目した報告を調査者が行っているのかを調べた。また、植物を野生またはそれに準じる環境で生育しているもの、人の手によって栽培されているものに分類し、在来の花と蝶の共生関係が確認できる場所および、どのような調査者が在来の花と蝶の共生関係に着目した報告をしているかを調べる。


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