| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-262  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林とアカマツ林における根圏滲出物の季節変化

*本多朝陽(早稲田大・院・先進), 新海恒(早稲田大・院・先進), 増田信悟(早稲田大・院・先進), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)

 植物は光合成によって同化した炭素の一部を根圏滲出物として土壌中へ滲出させている。森林生態系の炭素収支を正確に評価するために滲出物の定量は重要であるが、従来の研究において滲出物は無視されており、その季節変化を考慮した研究例は少ない。本研究では、同一環境下における2樹種の滲出物を測定することで、滲出物の季節変化を明らかにし、異なる2樹種の滲出量を比較した。

 調査は暖温帯の近接したコナラ(落葉広葉樹)とアカマツ(常緑針葉樹)がそれぞれ優占する2林分で行われた。滲出量を推定するにあたって、土壌中から露出させた樹木の細根(直径2 mm未満の根)をバーミキュライトと栄養液で満たした容器(100 ml)に入れ、土壌中へ埋め戻した。それを一定期間(24時間)後に回収し、容器内の炭素量の変化をNCアナライザーで測定することで炭素ベースの滲出速度を算出した。さらに細根バイオマスを測定することで、滲出された炭素量を生態系スケールに換算した。

 2017年における測定では、平均滲出速度はコナラとアカマツでそれぞれ0.49、1.09 mgC g fine root-1 day-1となり、コナラよりもアカマツの方が2倍程度高い値を示した。滲出速度の季節変化を生活形の異なる2樹種で比較すると、コナラでは夏季(7-9月)に高く、冬季(1‐3月)に低い傾向を示した。これに対してアカマツでは、明瞭な季節変化を示さなかったが、冬季に高い傾向を示した。さらに、滲出速度と細根バイオマスから算出した滲出量を比較すると、コナラとアカマツでそれぞれ30、61 gC m-2 year-1となり、滲出量が純一次生産量(NPP)に占める割合はコナラで2.6%、アカマツで9.6%であった。このことから、滲出物はNPPに少なからず寄与しており、炭素収支を正確に評価する上で考慮すべきパラメータであることが示唆された。


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