| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-275  (Poster presentation)

バイオチャー散布が暖温帯コナラ林の光合成に与える影響

*棚澤由実菜(早稲田大・教育), 友常満利(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 山中椎奈(早稲田大・教育), 加藤夕貴(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)

生物由来の有機物を熱分解してつくられるバイオチャーは土壌を改良し、植物の炭素固定能を向上させるといわれている。しかし、木本に着目して野外でバイオチャーと光合成の関係を明らかにした研究は少ない。そこで森林生態系におけるバイオチャー散布が光合成に与える影響を室内実験と野外実験から明らかにした。

室内実験では人工気象室内で生育させたコナラ実生を対象とし、バイオチャーを0(0 t区)、5(5 t区)、10 t/ha(10 t区)散布した。各実験区において実生の純光合成速度と呼吸速度をLI-6400で測定し、さらにルビスコに律速される最大カルボキシル化速度(Vcmax)と電子伝達系潜在速度(Jmax)も算出した。野外実験では埼玉県本庄市の暖温帯コナラ林の若木を対象とした。測定する木を中心とした半径2mの円形区を設置し、バイオチャーを0、5、10、20 t/ha散布した。室内実験と同様に最大光合成速度(Pmax)、Vcmax、Jmaxを算出した。

最初に室内実験の結果を比較すると、純光合成速度はどの区画でも生育初期は高い値を維持したが、一定期間を過ぎると低下がみられた。各処理区での違いをみると0 t区では71日目まで高い値を示したが、5 t区、10 t区では103日目まで高い純光合成速度を維持していた。一方、呼吸速度はどの区画でも同様の増減を繰り返しており、散布の影響はみられなかった。次に野外実験で比較すると、どの区画でも夏季に高いPmaxを示したが、5 t区と10 t区では常に0 t区より高い値を示した。VcmaxとJmaxは室内及び野外実験とも光合成速度の高い時期に高い値を示していた。

以上からバイオチャー散布処理によりコナラの光合成速度は増加することが明らかになった。これはバイオチャーの土壌改良効果により、カルボキシル化を促進する触媒であるルビスコや電子伝達系が増進したためであると考えられた。


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