| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-280  (Poster presentation)

ボルネオ熱帯山地林におけるミミズ糞塊生産による窒素・リンの可給化

*中野正隆, 横山大稀, 北山兼弘(京大・農・森林生態)

ミミズは主にリターや土壌中の有機物を摂取し、その過程で土壌間隙の生成、有機物粒子と無機物粒子の混合、微生物活動の活性化を引き起こし、土壌の肥沃度を上げる役割を果たしている。大型土壌動物群集においては、標高が上がるにつれてミミズ個体数が減少し、リタートランスフォーマーが優占する傾向があると指摘されている。しかし、ボルネオ島キナバル山では標高が上がるとミミズ類が優占するという逆の現象が起きていることが知られている。熱帯山地林が成立するキナバル山の高標高地域ではPheretima darnleiensis(Fletcher, 1886)と同定された大型のミミズが生息しており、土壌に坑道をつくり、地表にタワー型の糞塊を生産している。林内で多量の糞塊が観察されることから、糞塊生産がキナバル山の熱帯山地林における物質循環に大きく関わっていると考えられる。特に、これらの森林では土壌窒素やリンの可給性が低いことが知られており、窒素・リンを可給化し、森林レベルでの土壌の可給化に寄与していると考えられる。
本研究では、キナバル山の標高2700m、3100m地点のそれぞれ母岩の異なる(蛇紋岩サイト、花崗岩サイト、堆積岩サイト)計4サイトにおいてbulk土壌と糞塊を採取し、それぞれについて無機態窒素濃度とリン連続抽出による各リン画分濃度の測定を行い、bulk土壌と糞塊間の可給態窒素・リンの濃度差(糞塊による増加率)を求めた。また、森林面積当たりの土壌糞塊生産速度と糞塊による増加率の積のデータを用いて、森林レベルのミミズ糞塊による窒素・リン可給化(無機化)速度を決定した。本発表では、森林の窒素・リン循環への糞塊生産の影響について考察し、さらにリン連続抽出の各リン画分濃度の結果から、糞塊生産によるリン可給化のメカニズムについて考察する。


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