| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-015  (Poster presentation)

樹木・地形的要因と照葉樹林の台風被害の関係

*本江大樹(筑波大院・生命環境), 上條隆志(筑波大・生命環境系), 齊藤哲(森林総合研究所)

台風は森林構造を変化させ、長期にわたって森林の生態系に影響を与える主要な攪乱である。近年の研究によって、地球温暖化の進行による強力な台風の増加が示唆されていることから、樹木の台風被害に影響する要因を明らかにすることは重要である。しかし、照葉樹林において台風被害の要因を明らかにした研究はわずかである。そこで本研究は、樹木的および地形的要因が照葉樹林の台風被害に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査は宮崎県東諸県郡綾町の照葉樹自然林内に設置されている綾リサーチサイト(4 ha)で行った。サイトは1993年に台風撹乱を経験している。台風による幹折れ・根返り被害に関係のある要因を明らかにするため、応答変数を幹折れまたは根返り被害の有無、説明変数をDBH、成長率、材密度、最大樹高、根の支持力、地形とする一般化線形モデルを構築し、AICによりモデル選択を行った。
解析の結果、幹折れ被害と関係のある要因として、DBHが正の効果を、材密度が負の効果を示した。同様に根返り被害ではDBHが正の効果を示した。また、選択されたモデル数が過半数以下であったことから、有意な要因とはならないが根返り被害に関して材密度が負の傾向を、成長率が正の傾向を示した。一方、最大樹高、根の支持力、地形は台風被害の要因として選択されなかった。
DBH、材密度、成長率が台風被害の要因であったという結果は、熱帯林の結果と一致した。本研究の結果より、本調査地の照葉樹林では地形よりも、DBHといった樹木サイズや、材密度および成長率といった樹種特性が台風被害の大きな要因であることが明らかになった。また、幹折れしやすい幹の特徴として太く柔らかい幹であること、同様に根返りしやすい幹の特徴として太く柔らかく成長が早い幹であることが示唆された。


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