| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-061  (Poster presentation)

ボルネオ島の熱帯低地林における着生植物の空間分布

*駒田夏生(京都大・農), 中西晃(京都大・農), 田金秀一郎(九州大・理・生物), 清水加耶(島根大・生物資源), Paulus Meleng(サラワク森林局), 市岡孝朗(京都大・総合人間), 神崎護(京都大・農)

着生植物は宿主木を支持体として利用し非寄生的に生育する植物の総称であり、熱帯地域において種数、量ともに豊富になることが知られている。系統的に多様な分類群からなる着生植物は地球上の全維管束植物種数の約9%を占めるが、熱帯地域では地域の植物相の50%を占めることがある。また着生植物の分布は森林内で複雑なパターンを示すことが知られており、宿主木の樹皮の形質、樹形、個体サイズの影響を強く受ける。しかし着生植物に関する先行研究の殆どが新熱帯を調査地としており、生物多様性におけるホットスポットの一つとされる東南アジアにおける着生植物に関する知見はごくわずかであり、フロラおよび空間分布の特性などの基礎的な情報さえも殆ど得られていない。
本研究ではマレーシア領ボルネオ島に位置するランビルヒルズ国立公園の低地熱帯林において、着生植物フロラと着生植物群集の空間的な分布パターンを解明することを目的として調査を実施した。ロープクライミング技術を用いて、高さ25m以上の4科7属17種28個体の宿主木に登り、宿主木の個体ごとに出現する着生植物の種と、Johansson (1974)に基づいた着生植物各種の空間分布様式(高さ、樹幹内位置)を記録した。また林床に落下した着生植物も採集した。この結果、21科45属122種の維管束着生植物が記録され、全種の65%がラン科、ウラボシ科、キョウチクトウ科、クワ科に属していた。一方、着生植物種の少ないサクラソウ科、カタバミ科の種や特定の宿主木上でのみ分布が記録された着生植物種も確認された。全ての科が地上30―40mの高さに位置する林冠下部から中心部にかけての空間に集中して分布していた。新熱帯の低地林では多くの種が宿主木の主幹下部から林冠上部までの幅広い空間の利用が報告されているのに対し、東南アジア低地熱帯林では林冠部に着生植物群集が集中する傾向を示すことが示唆された。


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