| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-161  (Poster presentation)

ヒノキ人工林と落葉広葉樹林における土壌ブロックの交換がトビムシ群集に与える効果

*長谷川元洋(森林総研/四国), 岡部貴美子(森林総研)

 生物多様性の決定要因を探索する上で,分解者の知見は不足している。これまで、トビムシ群集の住み場所の選好性は、土壌由来の要因か地上部環境の要因か(土壌か場所か)を区別できなかった。この研究では、針葉樹人工林と広葉樹林の落葉層および土壌層を土壌ブロックとして採取し、それを互いの森林間で入れ替える手法でその検討を行っている。高知県大豊町のヒノキ人工林と落葉広葉樹林が隣接する調査地を3箇所設定した。各林分から合計80個、土壌ブロック(125cm3)を採取した。土壌ブロックのうち、半分は-20度で凍結殺虫した。残りの半分は非撹乱の状態に保った。また半分は同じ森林に戻し、残りは他方の森林に移動させた。設置後1週間、1ヶ月の土壌ブロックのトビムシの同定、群集構造の解析を行った。その結果、個体数及び種数は、ヒノキ林で多くなり、場所の効果は認められた、一方、土壌の効果は実験の初期にのみ、有意であった。トビムシ群集の各種の個体数割合、及びtraitの加重平均、に対する、土壌及び場所の効果を、冗長分析(Redundancy Analysis)を用いて解析したところ、種個体数割合でもtrait の加重平均でも常に場所の効果は認められる一方、土壌の効果は実験の初期にのみ認められた。
 上記の結果は、ヒノキ林の環境条件(有機物層含水率や有機物層量が大、低いpH)が、多くのトビムシの種にとって好適であることに起因すると考えられた。場所に比して、土壌の効果があまり認められない事から、土壌以外の環境要因(微気象)の重要性が示唆された。一方、大型種の中に広葉樹林を好む種がいる事が示された。これは、ヒノキ葉の大きさ、構造により、緻密な有機物層が発達大型種は入り込みにくい事に起因するのでは無いかと考えられた。上記の結果は、以前行ったスギ林と広葉樹林の実験と類似したものであるが、針葉樹の選好がより鮮明なものとなった。


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