| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-164  (Poster presentation)

鹿児島県におけるヤマタニシ属数種の殻形態分析を用いた個体群比較

*大窪和理(鹿児島大学), 冨山清升(鹿児島大学), 浅見崇比呂(信州大学)

陸産貝類は局所的に特殊化しやすい傾向があるため, 生物地理学の研究において有益な情報をもたらす.本研究ではヤマタニシCyclophorus herklotsi Martens, 1860の地理的変異を研究対象とし, サンプルの殻計測を行うことで, ヤマタニシの分類と計測方法の有用性について考察した.サンプルは鹿児島市城山城址自然公園(九州本土), 屋久島, 口永良部島, 口之島, 種子島のものを用い, 各地点において成貝30個体ずつを使用し, 計150個体の殻計測を行った.計測方法は亀田式の計測法と浦部式の計測法の2つの計測方法を用いて, 個体群間の距離は各変数の平均値間のユークリッド距離で求めた.そしてこの数値に基づいてクラスター分析を行い, 各個体群のグループ分けを行った.2つの測定方法に基づいてクラスターを作成したところ, 「城山と屋久島」, 「口永良部島と口之島」, そして「種子島」のサンプルがそれぞれクラスターを形成した.2つの分析方法を比較したが, その結果に大きな差異は見られなかった.また, 種子島の個体は他の産地の個体よりも殻のサイズが比較的大型の傾向が, 口永良部島と口之島の個体は他の産地の個体よりも殻のサイズが比較的小型の傾向がそれぞれ見られたが, いずれも個体群内変異の範囲内に収まるものであるため, 変種や亜種とは考えにくい.このことから, 殻形態の分析のみでは,本土の個体群と大隅諸島における島嶼の個体群を,亜種や変種といった分類学的なカテゴリーとして互いに区別することは出来ないと考えられる


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